ハイドロボールを使った小松菜の水耕栽培。バーミキュライトと成長の比較をしてみます

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 公園の木や花を見ると、強風が吹いても株が倒れることはありません。それは根が土をガッチリとつかんでいるからです。しかし水耕栽培では土の代わりに水を使いますので、地上部を支えることはできません。そのため水耕栽培では、植物を固定するために《培地》と呼ばれるものを使います。培地には、スポンジやバーミキュライトなどが利用されています。

 スポンジの場合には、ある程度育った苗の茎をスポンジで巻き、水耕栽培装置の穴に差し込みます。茎で支えていますので固定力が弱く、支柱などがないと風で倒れてしまうことがあります。

 一方で私が使っている培地はバーミキュライトです。これを使っているのは風が吹いても野菜が倒れにくいからです。バーミキュライトで発芽した種は、培地全体に根を伸ばします。そうすると根で地上部を支えることができますので、倒れたり傾いたりすることが少なくなります。

 バーミキュライトは100円ショップで購入していますが、その隣を見ると培地に使用できそうな「ハイドロボール」も陳列されています。ハイドロボールとは直径5mmほどの軽石みたいなものです。以前これを使用して枝豆を育てました。しかし根の張り具合が悪く、そよ風程度でも株が傾くことがありました。

 傾いてしまったのは大豆の背丈が高かったことも原因として挙げられます。そこで今回は、あまり大きくならない野菜をハイドロボールで育ててみようと思います。そして本当に根張りが弱いのかを確かめ、今後の水耕栽培をするためのデータとして活用したいと思います。

 

 

 

 

ハイドロボール&バーミキュライト

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 写真右がハイドロボールで、左がバーミキュライトになります。ハイドロボールの方が固く、粒が大きいです。今回の栽培では、培地にハイドロボールと比較用にバーミキュライトを使ったものを一緒に栽培し、根張りや成長度合いを見たいと思います。

 

育てる野菜

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 育てる野菜には小松菜を使用します。小松菜は大きさが20~25cmになったら収穫ですので、今回の栽培に適しているでしょう。また今の時期ならば1ヶ月くらいで収穫が可能です。結果が早く分かるのも選んだポイントです。

 

水耕栽培装置&液体肥料

 水耕栽培装置はこの記事《底面給水式の水耕栽培装置をさらに改良。発芽時の水分問題を解決しました》のものを使いました。今回はハイドロボールとバーミキュライトを3カップずつ用意し、日当たりを均一化するために交互にセットしました。
 液体肥料には微粉ハイポネックスを水道水で1000倍希釈したものを与えます。

 

2018年7月22日 種まき

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 各培地に小松菜の種をパラパラと適当に撒きました。その後軽く覆土をし、室内で発芽まで待ちます。以前ハイドロボールを使った栽培では、培地が非常に乾き易かったです。そのため今回はカップの底を液面に浸ける「底面給水法」を使って、ある程度の大きさまで育てる予定です。

 

2018年7月24日 発芽(発芽から0日目)

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 小松菜の双葉が開きましたので、本日を発芽0日目とします。まだハイドロボール、バーミキュライト共に成長の差は見られません。
 今までは室内で管理をしていましたが、双葉が出ましたのでベランダに出します。装置を置く場所によっては、真夏の強い光が長時間当たってしまいます。できるだけ柔らかい葉にするために、1日に数時間程度日の当たる所を見つけて水耕栽培装置を置きました。

 

2018年7月29日 本葉が見えてくる(発芽から5日目)

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 数日前に1次間引きをした小松菜から、本葉が見えてきました。しかし成長速度の差は全く見られないです。できれば違いが出てくれた方が面白いのですが…

 

2018年8月4日 間引き完了(発芽から11日目)

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 小松菜は本葉が大きくなり、次の葉が見えてきている株もあります。結構大きくなってきましたので、本日間引きをして1株にしました。

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 左の葉がバーミキュライト、右がハイドロボールのものです。ハイドロボールの株は本葉の色が緑ではなく、黄色味がかかっています。またバーミキュライトと比べると葉が小さいです。この株だけではなく、他の2つでも同じような傾向が見られました。
 液肥も日当たりも同じですので、培地の違いによって差が出ているのだと思います。来週にはもう少し分かりやすい状態になっていそうですね。

 

2018年8月7日 ハイドロボールの成長が悪い(発芽から13日目)

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 前回はハイドロボールで育てている株の方が、少し成長が遅く感じました。その差はさらに拡大して、ぱっと見ただけでも大きさが違います。バーミキュライトで育てている方は本葉が次から次へと出てきていますが、ハイドロボールでは3日前からあまり変化がありません。培地によってここまで差が出るとは、非常に興味深いです。

 

2018年8月11日 差が大きくなる(発芽から17日目)

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 前回、ハイドロボールで育てている小松菜の成長が悪いことを報告しました。しかしここにきて、少しだけ差が縮まりました。と言ってもまだ同じ大きさになるには時間がかかりそうです。
 あまりにも暑いせいか全ての株の調子が良くなく、ひ弱に育っている感じがします。前回小松菜を育てた時と比べると、成長度合いは半分くらいでしょうか。暑さのせいで枯れてしまったら実験が打ち切りになってしまうので、どうにか収穫まで育ってほしいです。

 

2018年8月19日 バーミキュライトの1株が枯れる(発芽から25日目)

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 私の印象では、小松菜は発芽~本葉数枚までの成長は遅いですが、それを過ぎるとかなり早いペースで伸びていきます。今育てている小松菜はこの点を超えて、一気に葉を大きくし始めました。

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 残念なことに、調子の悪かったバーミキュライトの小松菜1株が枯れてしまいました。

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 培地の違いによる成長の度合いを見てみましょう。左がハイドロボール、右がバーミキュライトになります。前回とは異なり、明らかに成長が違うのが見て取れます。ハイドロボールの方は3株中1株は大きく育っていますが、残りの2株は写真のように成長が芳しくありません。

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 特に茎の部分の差が大きいです。同じ時に種を蒔き、同じ液肥を使っているにもかかわらず、ここまで太さに違いが出てきました。培地の違いでこれほど差が生じるとは予想外です。

 

2018年8月25日 台風のため撤収(発芽から31日目)

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 先日の台風による強風で、小松菜の葉がかなり折れてしまいました。折れた葉を取り除いたらスカスカになってしまい、成長の比較をするのが困難な状態です。そのため本日撤収をすることに決めました。

 見るに耐えない姿ですが、バーミキュライトまたはハイドロボールで育てた株を個別に見ていきましょう。

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 こちらはバーミキュライトで育てた小松菜です。葉が大きくなっていたせいで強風をまともに受けてしまい、半分くらいの葉が折れてしまいました。
 3カップ分を育てましたが、その内の1つは小さい時に枯れてしまいました。他の2つは順調に成長し、もし台風が来なかったら結構な大きさに育っていたと思います。

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 株元は太くなっており、自立することができています。

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 一方で、こちらがハイドロボールで育てたものになります。葉が多い様に感じますが、これは単に強風で折れた葉が少なかったためです。
 3株中1株はバーミキュライトに匹敵するほどの大きさになりましたが、あとの2つはそれほど成長しませんでした。その2つの株が写真左側と中央のものです。自重を支えきれずに倒れてしまっています。

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 株元の比較をしてみましょう。上の写真がバーミキュライト、下がハイドロボールになります。明らかに幹の太さが違うことが分かります。特にバーミキュライトの方は地上部分に比べて細く、株が倒れてしまうのも納得です。

 

まとめ

 今回、培地にハイドロボールを使って小松菜を育てました。台風の強風のために強制終了となってしまいましたが、成育初期〜中期までの傾向は分かりました。バーミキュライトと比較して分かったことは以下の3つです。

  • 発芽から数枚目の本葉が出てくるまでは、大きな違いはありませんでした。
  • ハイドロボールで育てた小松菜は葉の色が薄い緑でした。これはハイドロボールが保持できる液肥の量が少ないため、栄養不良になっていたのではないかと考えています。
  • 3株中2株の成長が良くありませんでした。特に根本の茎が太くならなかったため、地上部を支えきれずに倒れやすかったです。またハイドロボールは粒が大きく動きやすいので、これも株を支えられなかった要因の1つです。

 以上の結果より、ハイドロボールは小松菜の水耕栽培にあまり適していないことが分かりました。約1ヶ月が経過しても茎が太くならず成長が遅いので、水耕栽培の《成長が早い》メリットがどこかに行ってしまったようです。

 価格の面を見ても、以前から使っているバーミキュライトより1.5倍ほど高いです。成長も遅く価格も高いとなると、ハイドロボールを使うのは全くおすすめできません。

 最後になりますが、どうも小松菜はハイドロボール培地では上手く育ちませんでした。果たしてこの傾向が他の野菜にも言えるのか、いつか実験をして確かめてみたいと思います。この結果が皆様の培地選定の役に立てれば幸いです。